釧路湿原塾公開講座記録2008年(平成20年)

公開講座アーカイブ

9月11日(木) 18:30~

生涯学習センター

「多目的ホール」

月尾嘉男塾長の公開講座「劣化する日本・再生する戦略」

4講師の月尾塾長は、「劣化する日本・再生する戦略」をテーマに、現状の日本について、解説しました。日本は、人口減、金の力、国債の格付けが下がるなどして、国際競争力は50カ国中の真ん中あたりです。


それは、国の経済が成り立っていないからです。例えば、国の予算のうち、歳出では、借金の金利部分に当たる国債が25%、歳入では、その金利を払えない場合にさらに借り入れる特例公債が全体の24%も占めています。足りない部分は、銀行や郵便事業会社が国債を発行するのですが、世界的にみても財政力は最低です。特に国の借金は、GDPの2倍、約860兆円もあります。


資源の海外依存も多く、1955年には石炭や木炭の生産があったので、80%は自給していましたが、今は4%です。食糧自給率は40%ですが、主食となり穀物は28%しかありません。木材も21%しかありません。価格も上がっています。原油は8年で3.6倍、小麦は3年で1.8倍、トウモロコシは2.79倍です。ということは調達する価格も高くなっていますし、中国ではマグロや伊勢エビと言った高級食材の消費が高まっています。


建設、土木業界も厳しく、社会基盤の整備が進むと、それを維持するための補修費などが増加し、新規事業ができなくなり、しかも、全体の建設予算も減少傾向です。また、携帯やインターネット、パソコンの普及、特にブロードバンドの整備は他国から後れをとっています。2


読解力、科学、数学の学力検査では、日本は順位を落としています。しかし、テレビを見ている時間は長くなっています。日本は安全と言われていましたが、凶悪、重大犯罪の検挙率は高いのですが、窃盗の検挙率は2002年で20%まで落ちています。それに伴い、倫理観も薄くなっています。


 格差も広がっています。非正規雇用者、いわゆる、パートアルバイトが増えています。貯蓄ゼロの家庭も23%まで広がってきました。生活保護を受けている家庭は増え、世界で9番目の水準です。地域格差で問題なのは高齢化です。人口比率の中で65歳以上の少なさは、現在北海道は22番目ですが、2030年には37番目になると推測されています。そのほか、有効求人倍率、高卒の就職率、ブロードバンド回線の普及率なども北海道は苦戦しています。


 しかし、逆な面もあります。北海道は、土地面積、国立公園、キャンプ場、森林面積、サイクリングコース、動物園、博物館や美術館、温泉などはトップクラスですし、住宅地の価格が安いことも魅力です。また、食糧自給率は200%であり、漁業も1番です。

そこで、アラン・ケイの「視点は IQ=80」という言葉を紹介します。これは、ものの見方は視点で80%決まる、ということです。よく例にだされるのが、アメリカの靴のセールスマンが、アフリカを訪ねました。みんな裸足でした。1人は、「全く見込めません」、もう1人は「すごいマーケットです」と報告しました。要するにどう見るかが大事です。


 地域格差とか言われていますが、それを地域差異と置き換え、他の地域と異なるところを見つけ出すことから始まります。例えば、流氷、カヌー、野生動物、露天風呂、食べ物などは北海道が1番です。


 最近では、歴史環境の再生もキーワードになっています。昔からある施設や建物を大切にし、それに若干手を加えることで、誘客効果が現れます。例えば、滋賀県長浜町です。小樽や函館もそうです。歴史遺産を現代遺産にすることです。商業地の再生では高松市などが有名です。1


 自然再生は、釧路湿原に流れる釧路川で蛇行の復元工事が始まっています。エコノミーとエコロジーは。一見すると相反するようですが、もともとOIKOS(家族、家)から派生している言葉で、そのバランスが重要である、と言われています。


 地産地消の取り組みもそうです。地元で牛肉を買うと、アメリカ産よりも高い場合があります。しかしCO2は、地元の牛を使うより、輸送などにより2.4倍も排出します。木材もシベリアから運んでくるとCO2は7倍にもなります。水も、ミネラルウオーターの消費が浸透していますが、1リットルの水は、ミネナルなら300円ですが、水道は10銭です。浄水器を使うとよろしいです。特に北海道は名水の宝庫です。


 地域資源を上手に使う例は全国にたくさんあります。近いところでは、東藻琴の山菜料理でしょうか。いままで、見向きもしなかった資源の見方を変えることで、ビジネスチャンスが広がります。地域商標の確立も大切です。

長期、短期を問わず、北海道は人気ナンバー1です。それを活用するためには、長期的な滞在者に来てもらうこと、若い人たちの仕事の場をつくることなどが必要です。


 日本は最近、文化大国と言われています。ブータンでは1976年から経済一辺倒ではなく、「国民総幸福宣言」をしました。幸福な地域になるよう、北海道の資産を活用してください。


■懇親会の様子


場所を七人の小人に移し、懇親会がもたれました。

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